スーパーフォーミュラで2コンパウンド制のタイヤルールが設けられています。
F1やインディカーを真似て、レース中に2つのコンパウンドを使わなければならないと決まっています。
しかし、このルールがことスーパーフォーミュラにおいては最悪です。
なぜF1やインディカーでは良くて、スーパーフォーミュラでは駄目なのか解説します。
1. タイヤが長持ちしすぎる
ヨコハマタイヤの2019年シーズンのソフトタイヤですが、鈴鹿ですらレースディスタンス走れてしまうほどタイヤの寿命が長い。
鈴鹿は世界的に見ても路面の攻撃性が高く、そこであんなに長持ちしてしまうソフトタイヤは意味がありません。
タイヤを作る技術が向上しているので、「作れてしまう」のだと思うのですが、それならソフトタイヤだけでよくないですか?という話になります。
「ミディアムは使いたくない」という考えがチームに生まれ、ソフトタイヤで限界まで走って最後のミディアムで数周だけ走る。
こんな戦略だらけになってしまいます。
F1の場合、ピレリが長持ちしないタイヤをずっと作らされてきました。
しかし、バーストしたり、上手く作動温度領域に入らなかったり、苦労が続きました。
V8時代のメルセデスは、本当にすぐタイヤが摩耗してどんどん後退していった。
あの時代はいかにタイヤを守るかというのがレース戦略でした。
2015年頃からタイヤがある程度コンサバになると、F1でもピットストップ1回という戦略が圧倒的多数になりました。
しかしそれでも、F1のソフトタイヤでレースディスタンスほとんどを走れるほどの寿命はなかった。鈴鹿等では2ストップでした。
いかにスーパーフォーミュラのソフトタイヤのライフが長いのかがわかります。
2. 燃料タンクが大きすぎる
F1と違って、インディカーやスーパーフォーミュラには給油があります。
しかし、インディカーとスーパーフォーミュラのレース距離を比べると、スーパーフォーミュラの燃料タンクは大きすぎます。
インディカーの場合、ロードコースだと1回のレースで2~3回ピットストップして給油しなければなりません。
一方でスーパーフォーミュラは1回のピットストップだけで給油が終わります。
タイヤの寿命がもてば、いくらでもピットストップを後ろにずらすことができます。
ということは、2コンパウンドあるタイヤのうち、より効率が良いタイヤを履いて、そうでないハズレの方はなるべく短くする。
こういった戦略が非常に簡単にできてしまうということになります。
本来の2コンパウンドの意図は、違うコンパウンドのタイヤをはくことでオーバーテイクが増えて、見ている人が楽しめるというものですが、皆が同じ戦略を取るようになってしまうとほとんど意味がなくなってしまいます。
どちらかというとハズレタイヤを履いている人がずるずる後退しているだけという味気ないもの。
3. タイヤウォーマーがない
これが最大の理由です
F1で使われているような、タイヤを温めておく装置がスーパーフォーミュラにはありません。
F1ではタイヤウォーマーがあることで、アンダーカット作戦が成立します。
早めにタイヤを履き替えることで、ラップタイムを爆発的に上げて前にいる車をピットストップで追い抜くという作戦です。
スーパーフォーミュラの場合、タイヤウォーマーがないのでアウトラップは非常に遅くなります。
つまり、前を走っている車は後ろの車がピットインしたら、次の1周全力で走ってタイムを上げ、ピットストップします。
先にピットした車はタイヤを温めるまでラップタイムが落ちるので、アンダーカットができなくなります。
フォーミュラカーはそんなにオーバーテイクが容易くないですから、遅くピットすれば前に出てなおかつ少し引き離せるので、1周あとにピットストップした方が有利ということになります。
加えて、先述のようにライフが長すぎるタイヤを使っている。
もうおわかりかと思います。
- 「2コンパウンドのうち効率の良いタイヤをできるだけ長く履きたい」
- タイヤの寿命はソフトコンパウンドですらひたすら長い
- 燃料タンクが大きく、かなり長い間給油せずに走り続けられる
- タイヤウォーマーがないのでアウトラップが遅く、アンダーカットできない
- 全チームがレース周回のほとんどをソフトタイヤを履き続けるという単調な戦略だらけに
結果的に2コンパウンドにしているメリットが少なく、退屈な展開になりやすい。
改善策
- ソフトタイヤをレースディスタンスの半分以下で「崖」がくるようにする
- 燃料タンクを小さくしてフルタンクでもレース距離2/3以上走れなくする
- タイヤウォーマー導入