コーナーが少なく、ストレート主体のレッドブルリンクでなぜフェルスタッペンは逆転勝利を収めることができたのか。
1. 高い路面温度と気温
気温が33度を記録、路面温度は60度近く、今の時期の日本よりもさらに暑い現地でした。
路面温度が上がればタイヤがオーバーヒートしやすくなります。
メルセデスは完全にオーバーヒートしていたようで、ハミルトンが1コーナーで飛び出しそうになっていました。
ハミルトンの頭の中で描いているコーナリングに車がついてこなかったという印象です。
また、気温が高いことでパワーユニットの排熱にも影響。
特にメルセデスはパワーユニットのオーバーヒートもあったようです。
高い気温によってメルセデスとフェラーリが本来の速さを発揮できなかったというのがあるかと思われます
この高い気温の中で、レッドブルだけあまり影響が大きくなかったのではないかと推測されます。
2. ミディアムタイヤスタート
フェラーリ勢がソフトタイヤでスタートし、レッドブルとメルセデスはミディアムタイヤでスタートしました。
ミディアムタイヤスタートだったことで、第1スティントを長くすることができ、フェルスタッペンは第2スティントでフェラーリ勢よりもタイヤの面で有利になります。
第2スティントではトップ3チームはハードタイヤでした。
さらに、メルセデスのボッタスが早めにピットストップしてタイヤを変えたことで、ミディアムタイヤスタートのボッタスよりもさらにフェルスタッペンは有利な状況になりました。
3. ハミルトンの車に問題発生
第1スティントの終盤、ハミルトンのペースがガタ落ちします。
フロントウィングのダメージとメルセデスは見ていたのか、ピットストップでフロントウィングを交換します。
これでかなりのタイムロス。
ハミルトンは5番手に落ちます。
また、車へのダメージがあったのかわかりませんが、最速で走れるだけの速さがありませんでした。
4. フェルスタッペンの神業
おそらくフェルスタッペンでなければベッテルすらオーバーテイクできたかわかりません。
ベッテルやボッタスのオーバーテイクにあまり手こずらず、タイムロスを抑え、ルクレーに逃げられなかった。
特にストレートスピードで劣るレッドブルですから、最もストレートが速いと言われるフェラーリをオーバーテイクできたというのは神業としか言いようがありません。
また、コーナーからの立ち上がりのトラクションが非常に良かったという点も今回の勝ちに貢献しました。
スタート時のアンチストールで一時は7位まで落ちたフェルスタッペンですから、そこからの追い上げは驚異的でした。
チームメイトのガスリーよりも1秒速いペースで走り続け、どんどん前との差を詰めていく姿は、今のF1では信じられないような逆転劇でした。
ルクレールもまさか15秒後ろにいるフェルスタッペンが追いついてこないだろうと思ってペースをコントロールしていたように思えます。むしろボッタスとの差を5秒でキープしていた。
5. スチュワードの判断
フェルスタッペンは最後のオーバーテイクでルクレールに接触します。
インに飛び込んでからコーナーを曲がった時にワイドに膨らんだため、ルクレールのスペースがなくなりルクレールがコースサイドに飛び出す形に。
ペナルティを受けてもおかしくない接触でしたが、レーシングインシデントとして処理され、ペナルティはありませんでした。
裁定では、フェルスタッペンに完全に過失があるとは言えないということでした。
要は、コーナーを曲がっただけで、ルクレールを押し出そうという意図は見られないということです。
ルクレールは「不公平だ」といいつつも、「フェルスタッペンの1回目のオーバーテイクはまともだった」「いずれ抜かれていた」と語っており、あまり強く抗議しなかったように思えます。
1回目のオーバーテイクでもルクレールはかなり紳士的なバトルをしてますから、オーバーテイク時にフェルスタッペンに激しく接触してスピンなんてことにならなかったのが不幸中の幸いだったように思います。