「今年1年のアップデートによる勢力図変化は昨年までとは比較にならないほど大きい」
開幕前にそう書きましたが、すでにその様相を呈しています。
ヨーロッパラウンド開始時点の勢力図
アルピーヌ
アルファタウリ
ハース
ウィリアムズ
まず、フェラーリに関して開幕前にこう書きました。
「1周のアタックラップは目を見張るものがある」
「ロングランペースで一歩劣っている」
これが的確な分析だったのは言うまでもないでしょう。
予選で最速なのはフェラーリです。テレメトリーを見ると、中高速コーナーが飛び抜けて速い車です。
しかし、タイヤのデグラデーションレートが大きく、現状ではポールスタートでも後ろを引き離すことはできません。
また、F1-75は若干ピーキーなコーナリング特性があり、ルクレールやサインツがスピンする場面が度々見られます。
レッドブルは開幕5戦でアップデートを集中投下し、軽量化も行われ、レースペースで優位に立っています。
しかし、レッドブルはマシンパーツやらPUやら信頼性が不透明です。マイアミでペレスのパワーが数周落ちたり、スペインでDRSが機能しなかったり。
この2チームに関してはヨーロッパラウンドも開幕前の予想通りです。
メルセデスはスペインのアップデートで明らかにポーポシングを改善しました。メルセデスのエンジニア達はW13のポーポシングの原因を解明しました。
開幕前に「ヨーロッパラウンドまで目覚めることはない」と分析しましたが、完璧に的中しました。
勢力図の位置的には、場所は変わらないものの、レースペースにおいて中段との差は少し開きました。開幕前の「後ろを見ながらのレースになる」はもう書く必要がありません。現状、ポーポシング改善仕様のW13は高速コーナーとストレートが速く、低速コーナーが遅い車です。
アルファロメオは中段の上に躍り出ました。
開幕時点ではトラブルが多く、純粋なペースを発揮できなかったことが多々ありましたが、ボッタスがノートラブルで走ると決勝では他の中段勢を引き離すペースがあります。C42はどのサーキットでも安定していて、すぐに速さを引き出せるのが長所です。
メルセデス時代にタイヤマネージメントが苦手だったボッタスでも全く問題なくロングランペースを維持できます。
スペインGP予選のセクター3ではボッタスのタイムはペレスより上、フェルスタッペンとわずか0.03秒差でした。
アルピーヌはサーキット特性の影響を大きく受けます。おそらく、全開区間の多い高速サーキットで速い車です。開幕前に予想した「コンスタントにポイントが狙える」というのは変わっていません。ポーポシングが目立つ車です。
マクラーレンはロングランではアルピーヌと互角の車です。ドラッグが大きくストレートが遅いのが特徴。スペインで持ち込んだ大型アップデートの真価を発揮すれば、アルファロメオと良い勝負ができるかもしれません。
リカルドいわく「guaranteed Q3 car」トップ10は確実に狙える車ですが、アルファロメオの躍進で相対的に遅く見えます。
アルファタウリは開幕時点から明らかに順位を下げた車です。何台かリタイアしてやっとポイントが取れる。開幕時点とは異なる勢力図グループを作らなければなりません。
アルファロメオと比べると非常にバランスが悪い車です。そして信頼性の低さ。スペインのフリー走行でもガスリーが度々問題に見舞われていました。
ハースですが、開幕前に言ったように「一発アタックだけなら10位内」の予選番長です。しかし決勝になるとタイヤがすぐ垂れて遅いです。白いフェラーリなどと呼ばれているのですが、フェラーリと特性が似ているならデグラデーションが大きいところも似てしまっているのかもしれません。
また、ポーポシングの影響が大きかったり小さかったり、振れ幅の大きい車です。スペインではアップデート無し。速さはあるので今後のアップデートが成功すればアルピーヌやマクラーレンと互角以上に戦えるかもしれません。
アストンマーチンは正直スペインでのあのBスペックシャシーアップデートが今後どういう影響を与えるのかよくわかりません。ベッテルは大して速くならないと言っていますが、ポーポシングが改善されて開幕時と比べれば遥かにマシです。スペインではベッテルがガスリーの前でゴールしています。ポテンシャルがあるのかどうかはヨーロッパラウンドで見極める必要があります。ある意味、ヨーロッパラウンドで最も楽しみなチームです。
ウィリアムズは「直線番長」です。いつもスピードトラップの上位にいますが、勢力図の位置は変わっていません。最下位。
しかし、車の特性を活かせるサーキットではあわよくばアルボンがポイントを獲得できます。中段勢にとっては、前にいてほしくない車です。
次の勢力図更新はサマーブレイク明けです。
市街地で条件が特殊な「モナコ」と「バクー」は一部のチームが苦労あるいは躍進するでしょう。特にモナコでフェラーリのタイヤのデグラデーションがどうなるのかは注目です。