アブダビグランプリ決勝。ラストのセーフティカーはフェルスタッペンに優勝をもたらしました。
「奇跡が起きた」
「最後まで諦めなかった」
美辞麗句が並べられたものの、見る人見ればレースコントロールの判断は必ず禍根を残す事がわかる疑惑に満ちたものでした。
メルセデスはレース後に異議申し立てを行いました。これらは却下されたもの、メルセデス側は控訴しています。
問題点
F1のレギュレーションでは、安全が確認されれば周回遅れの車をセーフティカーの前に出し、隊列を整えることができます。
しかし、今回この指示が出されたのは、58周中の57周目、しかもバックストレートを走っている時でした。それまでは周回遅れがセーフティカーを抜くことは許されていませんでした。この遅いタイミングのためセーフティカーを追い抜いた車がまだ隊列に追いつく前にレースが再開されることとなります。
ラップバックの指示が出て半周もしないうちにセーフティカーが終了するようなレースは見たことがありません。
加えて、ストロールとリカルド、ミックはセーフティカーを追い抜くことが許されませんでした。3人も1周遅れでしたが、なぜかセーフティカーの前に出る指示はフェルスタッペンとハミルトンの間にいる車だけでした。
カルロス・サインツは自分とフェルスタッペンの間に周回遅れがいる状況のままとなり、リスタート後に混乱したと語っています。
サインツの無線がこの奇妙な決定を物語っています。
サインツ:I am not going to race with all these cars in front of me, they need to unlap.(俺は前にいる車とレースしてないんだろ?彼らは周回を取り戻すべきだ)
エンジニア:Yeah, that the message for them (ああ。そう伝えられている)
エンジニア:They should pass, stay calm. (彼らは追い抜くべきだ。落ち着け。)
エンジニア:They will not unlap themselves, so they stay there. (彼らは周回を取り戻さないようだ。だからそのままそこにいる。)
サインツ:Very, very strange... (おかしいだろ・・・)
同一周にも関わらず、前に出させてもらえたドライバーとそうでないドライバーがいるという状況は公平性が全く保たれていません。
ちなみにメルセデスの訴えに対するFIAの回答はかなり苦しい言い訳となっており、彼らがセーフティカーの前に出させてもらえなかった理由は一切説明されていません。
レースコントロールはとにかくセーフティカーでレースが終わらないようにしようとしたと考えられるものの、あまりにも強引かつ筋の通らない決定を下してしまっています。結果的に多くのドライバーを混乱させています。
終盤のセーフティカーはインディカーっぽいと思う人もいるかもしれませんが、インディ500ですらイエローコーションのままレースが終わる事はあります。
少なくともバタバタした状態でレースが再開されるというのはインディ500やル・マンでもありえません。あまりにも「ショー優先」で安全や公平性は無視したレース運営だったと言えます。
F1ジャーナリストでフジテレビで解説をすることもある米屋氏はこの判断について「これがモーターレーシングだと思っているならマシはF1のレースディレクターには不適任」「F1に失望した」と語っています。彼はこの事についてYouTubeで言及するでしょうから、動画をここにも貼っておこうかと思います。
伝説のF1ドライバー、井上隆智穂氏はTwitterで「コメディショー?あるいはエンターテインメント?私は当然本当に公平なレースが見たかった!」と述べています。
comedy show?? or entertainment ??
— Taki Inoue (@takiinoue) 2021年12月12日
I wanted to watch the real fair race, indeed !!
また、元F1ドライバーでインディ500チャンピオンのアレクサンダー・ロッシは「フェルスタッペンが今年のチャンピオンに値するのは明らか」だとしつつも、レース運営の仕方については気に入らないと述べています。
Obviously @Max33Verstappen deserved it just as much this year, buttttt I don’t love any of the way that went down.
— Alexander Rossi (@AlexanderRossi) 2021年12月12日
元ワールドチャンピオンのデイモン・ヒルは「レースディレクターがその場限りの決定ができる、これがこのスポーツの新しい運営方法だ。」と皮肉たっぷりに書いています。
A lot of not very happy people. And a lot of very happy people. This is a new way of running the sport where the Race Director can make these ad hoc decisions. Its been a bit too 'guess what I'm going to do now' I think. #f1
— Damon Hill (@HillF1) 2021年12月12日
そしてウィリアムズのジョージ・ラッセルも「容認できない」と大文字ツイートしています。
THIS IS UNACCEPTABLE!!!!
— George Russell (@GeorgeRussell63) 2021年12月12日
Max is an absolutely fantastic driver who has had an incredible season and I have nothing but huge respect for him, but what just happened is absolutely unacceptable. I cannot believe what we’ve just seen.
— George Russell (@GeorgeRussell63) 2021年12月12日
よく知らない人が見れば、最後の1周で奇跡的な逆転!という展開に思えますが、40周以上走ったハードタイヤのハミルトンと、新品ソフトのフェルスタッペン、そしてぎりぎりになって2人の間の車が全て取り払われたという状況は、大会運営側がフェルスタッペンを勝たせたといっても過言ではありません。
だからこそハミルトンは「操作されたレースだ」と無線で言いましたし、フジテレビで解説をしていたベテランの川井一仁氏はあと残り2周の段階で一部の周回遅れをセーフティカーの前に出させてリスタートするという指示を見た時すぐに察して、「ホンダさんには悪いけど~」と前置きした上で、マシはフェルスタッペンを勝たせようとしているとオブラートに包みながら言ったわけです。
ブラジルGPの裁定もしかり、レギュレーションとレースコントロールの権限をもう一度見直すべき時です。