2021 F1 フランスGP決勝。
スタート直後の1コーナーでフェルスタッペンがコースからはみ出しハミルトンがこのタイミングでトップに立ちました。
LAP 1/53
— Formula 1 (@F1) 2021年6月20日
Verstappen slides off at Turn 2 and Hamilton surges past into the lead!
Verstappen clings onto second, Bottas and Perez directly behind #FrenchGP 🇫🇷 #F1 pic.twitter.com/NLCUv3vEBT
その後、第1スティントではハミルトン・フェルスタッペン・ボッタスの3人が連なるという展開。
金曜日に「ポテンシャルはメルセデスが上」と書いたように、ポールを取ったフェルスタッペンの車でもハミルトンの後ろを常についていくのは難しく、ほんの少しずつ離され、第1スティントでは最終的に3秒のギャップを築かれます。
ボッタスが第1スティントでフェルスタッペンから離されることもありませんでした。
そして、金曜日のフリー走行後にこう書きました。
「決勝ではタイヤ交換のタイミングがかなり重要になるでしょう。」
レースはまさにこの通りの展開となりました。
ボッタスが先にピットストップしタイヤ交換、すぐにフェルスタッペンが反応しピットストップ。フェルスタッペンはボッタスの前に出ます。
フェルスタッペンのピットの1周後にハミルトンがピットストップし、ピットアウトでフェルスタッペンとほぼ同時となったものの、フェルスタッペンがインを取ってアンダーカットに成功し、トップを取り戻すことに。
ハミルトンはハンマータイムを言われプッシュしましたが、セクター1のタイムだけでタイヤ交換を終えたボッタスより1秒遅く、タイヤの余力がほとんどなかったように思います。
ここからメルセデスの2人がフェルスタッペンに猛チャージをかけます。
10周に渡ってフェルスタッペンの1秒以内に入り、オーバーテイクの機会をうかがいました。
しかし、土曜の予選後の記事でこう指摘しました。
「(レッドブルが)ローダウンフォースなら同じ履歴のタイヤを履いている限り抜かれることはない」
この通り、フェルスタッペンは接近こそされるものの、オーバーテイクのチャンスは与えず。
一方、第1スティントで少しずつ離されていた、そしてタイヤマネージメントをしていたペレスは、ピットストップを7周近く遅らせ、ハードタイヤにオフセットを作る戦略を取ります。
ペレスがピットストップしたタイミングでは、トップから約20秒ものギャップがありました。
一方、ハードタイヤで13周ほどしたタイミングでフェルスタッペンが「このペースでは最後までタイヤが持たない」と訴えます。ハミルトンやボッタスも同じことを訴えました。
ここでレッドブルは大胆にもミディアムタイヤに履き替える戦略に出ました。
この作戦を取ったのは、もしハミルトンがピットストップしても10秒以上後ろにいるペレスを壁にできるので、フェルスタッペンが負けることはないと判断したからだと思います。
ハミルトンとボッタスは、第2スティントの前半でフェルスタッペンにオーバーテイクをしかけるためにフェルスタッペンの後ろを走り、かなりプッシュしたと思います。タイヤの摩耗はかなり進んでいたでしょう。
特にボッタスに関してはハードタイヤの序盤で強烈なペースで走っていたのでなおさらタイヤは厳しい状態だったことでしょう。
フェルスタッペンはミディアムタイヤに替えて1周2秒速いペースで追い上げることに。
ハミルトンが1分38秒台で走っている状況で、フレッシュなミディアムタイヤのフェルスタッペンは1分36秒台で追い上げました。
フェルスタッペンがピットアウトしたタイミングでトップと約18秒の差があり、残り20周だったため、平均1秒速ければ優勝できるという計算だったと思います。
フェルスタッペンはボッタスに追いつくと難なくオーバーテイクします。
タイヤがボッタスより7周新しいペレスは、ボッタスがフェルスタッペンとバトルしている間に差を一気に詰め、シケインの立ち上がりのトラクションを活かしてオーバーテイクに成功。3位に浮上。
ハミルトンも最後の数周、残ったタイヤを全て使い自己ベストを出すという驚異的な粘りを見せましたが、残り2周のところでフェルスタッペンがオーバーテイク。
レッドブルがリアウイングをローダウンフォースのものにしていたのが功を奏しました。
中段はマクラーレンが速さを見せる
中段は速いレースペースで着実に順位を上げたマクラーレンが5位と6位に。
おそらくレースを重視したセットアップにしていたのでしょう。
気づいたら5位にいるノリス。ノリスはペレスと同じく第1スティントを引っ張る戦略でした。
ガスリーが7位。
アロンソ8位。
そしてこちらも戦略勝ちのアストンマーチンが9位10位でポイント獲得。
アストンマーチンはハードで引っ張ってミディアムにつなぐ戦略でした。
ラッセル12位もかなりの結果です。
逆にフェラーリは次々に順位を落としてノーポイントに。
フェラーリはレースペースがかなり厳しく、ある段階では同じタイヤ履歴でもガスリーやアロンソから1秒近く遅かったです。
フェラーリがアストンマーチンに抜かれてしまったのは驚きました。
フェラーリのタイヤのデグラデーションは想像以上に酷かったようです。
フェラーリは今年の車の開発をやめたようなので今後も似たような厳しいレースはあるでしょう。
2ストップが適切な戦略
トップ争いの話に戻ると、フェルスタッペンが2回目のピットストップを先にした時点で、ハミルトンにはステイアウト以外の選択肢はなかったはずです。
スペインと異なるのは、前にいたフェルスタッペンが先手を打ってピットした事です。
メルセデスは1位を早々に諦めてボッタスだけピットストップさせて3位を守るという選択も可能だったはずですが、フェルスタッペンを何周か押さえてくれる可能性に賭けたのでしょう。ボッタスは怒ってましたが。
本当の意味でレースの結果を左右したのは、最初のピットストップでフェルスタッペンがハミルトンをアンダーカットしたこと、ペレスが第1スティントを伸ばした事だったと思います。
最初のピットストップでフェルスタッペンがハミルトンの後ろに出ていた場合、ハミルトンはタイヤを無駄に使わずに済む上に、タービュランスの中で摩耗を早めることもないので展開が変わっていたでしょう。実際のレースだと10周もやってたのでかなりタイヤが辛くなったでしょう。
フェルスタッペンはハミルトンをアンダーカットできるとは全く思っていなかったようです。しかし、アウトラップでどんどんグリップが上がって行ったとのこと。
Red Bull's undercut strategy worked a treat... just 😮 #FrenchGP 🇫🇷 #F1 pic.twitter.com/bQU17aBjUL
— Formula 1 (@F1) 2021年6月20日
レース後のインタビューでハミルトンは終盤のフェルスタッペンのオーバーテイクを防ぐつもりが全くなかった事を明かしています。
SkyTVに出演していたニコ・ロズベルグが、ハミルトンはフェルスタッペンのオーバーテイクを阻止するためにもっとディフェンシブな動きもできたのではないかと指摘したものの、ハミルトンは「フロントのグリップがもうなくなっていたので防御しても無駄だった。ボッタスが抜かれたのがわかっていたので混乱することはなかった」と述べています。
ボッタスは2ストップが取るべき戦略だったと主張しており、2ストップだったら表彰台にも乗れたし、トップ争いもできたと語っています。
次のオーストリア、レッドブルリンクは最近天候が不安定なようで、雨になる可能性があります。何が起こるか見てみる必要があります。