Toyota Gazoo Racingは現在世界耐久選手権にエントリーしています。
しかし、その耐久選手権からポルシェもアウディもいなくなります。
2016年でアウディが、2017年でポルシェが去ります。
来年、ワークスとして参加しているのがトヨタだけになってしまいます。
ドイツメーカーが撤退した理由はいくつかありますが、まずWECのLMP1クラスのハイブリッド車両開発には馬鹿げたほどのコストがかかるということです。
さらに、アウディもポルシェもル・マンでの勝利を複数回手にし、満足してしまったということもあります。
加えて、電気自動車のレース「フォーミュラE」の方がより華やかでこれからの自動車産業への影響も大きいとドイツの自動車メーカーは見ているからだと思われます。
2019年のフォーミュラEには「メルセデス」「ポルシェ」「BMW」「ルノー」「アウディ」と名だたる自動車メーカーが勢揃いします。EVの技術を磨くにはもってこいです。
トヨタとポルシェ、わずか5台のトップ争いとなった今年のル・マン24時間レースですが、信頼性の問題が頻出。
まだハイブリッド技術は耐久レースができるレベルには来ていないという意見も出ました。
一方で普通の内燃エンジンで走るLMP2には多数のチームがエントリーして激しい戦いを繰り広げました。
LMP1はあまりにもコストが高い。だからLMP2だというチームも多いようです。
リベリオンレーシングは長い間LMP1で戦ってきましたが、ついに2017年からLMP2に移動した事が象徴的です。
また、日産も15年にLMP1に参戦をしたものの、車の開発に失敗してわずか1年で撤退。
このハイブリッドルールが参入障壁になるとしてレギュレーションの変更が模索されています。内燃エンジンだけでもLMP1-H並に速い車でエントリー可能にするという話。
果たしてこれからトヨタがWECにワークスとして参加する意味は大きいのでしょうか?
アウディやポルシェと競っていた時、さらにハイブリッドの技術を市販車にフィードバックするという部分では確かに意味は大きかったと思います。
しかし、WECのル・マン戦以外はフォーミュラEと比較すると盛り上がりに欠ける印象です。
トヨタがラリーレースのWRCに参加したのは良いことだと思います。
ヤリスの売り上げにも相当な貢献をしています。
ニュルブルクリンク24時間レースに参加するのも良いことだと思います。市販車の耐久性向上に直接繋がりますし人材育成にも役立っているでしょう。
しかし、もうこれ以上WECにワークスチームとして参加するのはやめるべきだと言わざるをえません。少なくともかつてのように大企業がしのぎを削るLMP1に戻るまでは。
新レギュレーションでトヨタが支援したチームでル・マンのトップカテゴリにエントリーするということはやってもいいと思います。
ハイブリッドを使っていないカスタマー車に技術の粋を結集したトヨタのマシンで勝って喜べるのかという話にもなってきます。
それでも、トヨタはドイツメーカーを追ってフォーミュラEに参戦するか、再びF1に戻るべきです。
メルセデスはF1で培ったMGU-Hを初めて市販車に投入したスーパーカー「Project One」を発表しました。
トヨタもWECの技術を使った「GR HV SPORTS concept」を発表しました。
「F1の技術を使った車」と「WECの技術を使った車」、一般の人が聞いたらどちらがより魅力的かは言うまでもありません。それほどWECは微妙なカテゴリに留まっています。
メルセデスはMGU-HとMGU-K、さらにはICEの進歩によって、テストベンチで熱効率50%を達成したと発表しています。果たしてトヨタはメルセデスにお得意のハイブリッドで勝てるのか怪しくなってきています。
星野一義さんがスーパーフォーミュラの記者会見で、関口選手のようなトヨタ傘下の有能な日本人ドライバーが世界の舞台で戦えないということをかなり悔しがっていました。
世界の舞台というのはF1でありインディカーでありフォーミュラEであり、世界のレースファンから注目される場所です。
おそらく2012年とか2013年とか2014年の頃ならWECに参加する意味があると言えたでしょうが、ポルシェとアウディが撤退してしまう2018年に莫大な予算を投入してWECのLMP1に参加する必要性があまり感じられません。
WECがものすごく人気のあるカテゴリなら別ですがそういうわけでもありません。